売上のほとんどが海外という場合、日本の将来の人口は、売上に大きく影響しないかもしれません。しかし、日本国内で生産しているならば、労働者の確保で苦労することになるかもしれません。

一方、財やサービスの販売先がほぼ日本国内に限定されている場合、将来の日本の人口の減少は、企業の存続にとって大きな脅威でしょう。

そこで、日本全体の将来の人口予測「推計人口」を使って、将来も繁栄できそうな業界、難しそうな業界などを考えていきます。

将来の日本の人口

将来の日本の人口は、どのように推移するでしょうか。これについて研究している機関があります。「国立社会保障・人口問題研究所」です。この機関から、各種データを引用して考察します。最初に、人口ピラミッドを確認しましょう。

人口ピラミッドとは、縦軸を年齢、横軸を人数として作ったグラフです。これを見れば、どの年代の人数が多いか、国全体の年齢別のバランスはどうか、といったことが分かります。

2010年の人口ピラミッド

pyramid-1

本来ならば、若年層ほど人数が多く、年を取るにしたがって徐々に人数が減るというのが望ましいでしょう。というのは、大勢の若い人で少数の高齢者を支える構図となりますので、若い人の負担が少ないからです。

しかし、2010年時点の日本においては、最も人数が多い年齢層は65才あたりだと分かります。この記事を投稿した2018年現在ですと、およそ70代の層が最も人数が多いということになります。

一方、年少人口の比率がとても小さいことが分かります。彼らが成長したときに、高齢者全てを支えるように要求することが、果たしてできるでしょうか。

なお、このグラフで、65歳あたりでいきなり人数が増えていることが分かります。

これは、第二次世界大戦の影響です。いつ死ぬかもしれない戦争の時代が終わり、自分の子供を死地に送る必要がなくなりました。子供を産むことをためらっていた親が、戦争終結とともに安心して子供を産んだ様子を想像するのは、難しくないでしょう。

こうして誕生した人々が「団塊の世代」です。そして、その団塊の世代が親になり、大勢の子供が生まれます。「団塊ジュニア」です。団塊ジュニアが親になるころ・・・子供を産んでいない様子が分かります。日本は、何らかの理由で子供を産めない環境になっている可能性があります。

2030年の人口ピラミッド

では、2030年の人口ピラミッド予測がどうなっているか、確認しましょう。

pyramid-2

グラフの下の方に「出生低位推計」などと書いたものが3つあります。将来の人口を確実に予測することは困難ですので、3つの場合分けをして予想したものです。しかし、いずれの場合も、若年人口の減少という点では変わりありません。

では、このグラフを元にして、株式投資を考えてみましょう。日本で財・サービスを提供する企業を選んで株式投資をする際の参考になるでしょう。

高齢者がターゲット層の会社:
人口が極めて多い層です。一定以上の資産を持っている人数も多いと予想できますので、有望かもしれません。

生産年齢がターゲット層の会社:
生産年齢といっても、年齢層は幅広いです(15歳~64歳)。従来は、子育て等で資金的・時間的余裕がない場合が多かったかもしれませんが、子供を持たない層が大勢いると予想できます。彼らをターゲットにしている企業の株を買うのは、有望かもしれません。

年少者をターゲットにする会社:
年少者(0歳~14歳)は人口比率がとても少ないです。よって、この層をターゲットにする会社は競争が厳しくなる可能性があります。しかし、親や祖父母が子供一人に投入できる資金量は増える可能性がありますから、子供向けの高額商品を扱う企業は有望かもしれません。

年齢層別推計人口を概観して、株式投資を考える

次に、日本の人口を3つの世代に分けて、長期の株式投資の銘柄選びに結び付けてみましょう。3つの世代とは、以下の通りです。

高齢世代:65歳以上
生産年齢:15歳~64歳
年少世代:0歳~14歳

なお、ここでは出生数・死亡数ともに中位推計を使っています。

日本全体の人口推移

日本全体の人口の推移予測を確認しましょう。下のグラフの通りです。横軸は年を表します。縦軸は国民の数で、単位は1,000人です。

population

このグラフを見ますと、年を追うごとに人口が減り続ける様子が分かります。しかも、人口減少速度が次第に大きくなっている様子が分かります。

2010年:1億2,800万人
2020年:1億2,400万人(10年前比で400万人減)
2030年:1億1,600万人(10年前比で800万人減)
2040年:1億700万人(10年前比で900万人減)

このまま永遠に人口が減り続けることはなく、どこかで均衡すると予想できます。しかし、「人口が増えることを基準にして作ってきた日本の諸制度」の維持は極めて困難になると予想できます。

具体的には、年功序列、終身雇用、定年まで働くことを前提とした退職金制度等です。

株式投資の観点で見ると、「多くの人に繰り返したくさん買ってもらう」ことが前提となっている業界は厳しいのでは?と予想できます。人口が減るのですから、財やサービスを買う人数が減ってしまうからです。

では、日本の人口を3つに区分して考察しましょう。

年少人口割合の推移

年少人口の割合をグラフにしたものは下の通りです。

young-population

2010年には13%程度でしたが、2040年には10%になっています。このグラフには掲載されていませんが、2040年以降も割合は徐々に減少し、2060年には9.1%になると見込まれています。

人口が減少する中で年少人口の割合が減るのですから、人口の実数は大きく減ります。よって、株式投資の視点から見ますと、「年少者をターゲットにした、低価格商品を販売する業界は競争が厳しくなる」と予想できます。

一方、このような状況ですが、子供一人当たりに投入される資金量という面では増加する可能性があります。というのは、親または祖父母から見て、資金を提供する先の子供の数が減るからです。

そこで、子供向けの高額商品を製造販売する業界は、底堅く推移する可能性があると予想できます。

生産年齢人口割合の推移

次に、生産年齢人口(15歳~64歳)の割合の推移を確認しましょう。

middle-population

年少人口の減少過程とは異なることが分かります。すなわち、2015年から2030年にかけて、生産年齢人口の割合の減少は緩やかになっています。そして、2030年を超えるあたりから、大きく割合を減らしています。

生産年齢人口は年齢の幅が大きいです。よって、もう少し細かくして考えてみましょう。

若い世代の労働者数

若い世代の労働者の確保は、次第に難しくなると予想できます。というのは、年少人口が減っているからです。年少人口が少ないということは、彼らが成長した後の人口もやはり少ないということになります。

すると、若い労働者を低い労働コストで雇用することによって成り立っている業界は、厳しくなると予想できます。例えば、ある会社で働いている人のうち、アルバイト等の比率が極めて高い業界です。

労働者を確保するために必要なコストは上昇するでしょう。その過程で、販売価格にコストを反映できるかどうかがカギになる可能性があります。

中年くらいの労働者数

団塊ジュニアの世代を含みますから、人数は多いです。また、団塊ジュニアの人数の割には、その子供の世代の人数は少なめです。このため、可処分所得が多い世帯が比較的多い可能性があります。

よって、この世代をターゲットにした企業は有望かもしれません。しかし、どの企業もそういう世代を狙ってビジネスを展開するでしょうから、安泰の業界があると考えるのは楽観的過ぎるかもしれません。

2030年くらいから生産年齢人口の割合が減少するのは、この団塊ジュニアが引退するためです。

老年人口割合の推移

最後に、老年人口(65歳以上)の割合の推移を確認しましょう。年少人口、生産年齢人口のグラフとは逆になっています。すなわち、継続的に割合が上昇し続けている様子が分かります。

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よって、株式投資という面でいえば、この層をターゲットにする業界が有望だろうと予想できます。ただし、高齢者層に財やサービスを提供するためには、労働者を確保することが必要です。

年少人口や生産年齢人口は減り続けます。よって、労働者一人当たりの雇用コストは大きくなる可能性があります。それに対応できない業界や企業は、先行きに注意信号が点灯するでしょう。

都道府県別の推計人口で株式投資の銘柄を考える

次に、都道府県別の推計人口を考察して、株式投資の銘柄選びに結び付けましょう。

都道府県別の推計人口の推移

日本地図を使って、将来の人口の増減を都道府県別に確認しましょう。下の地図は、2015年から2020年にかけて、人口がどのように増減するかを予想したものです(見やすいように、元の表を一部加工しています)。

population-prefectures

各種報道を見ますと、地方の人口が減っていること、東京を中心とした地域に人口が集中しつつあると報道されています。上の地図は、その報道を補強する内容になっています。少し詳しく見ていきましょう。

首都圏: 人口の減少はわずかです。
大阪・京都: こちらも、人口の減少はわずかです。
愛知・福岡: こちらも、人口を維持できています。
秋田・青森: 人口の減少が大きいです。

すなわち、東京を中心とする首都圏、そして地方の中核都市を抱える都道府県の人口は維持されやすく、それ以外の地域の人口は減りやすいことが分かります。

株式投資の視点から見ますと、以下のことが予想できるでしょう。

・首都圏や地方中核都市以外を収益基盤とする企業は、厳しくなる可能性。
・全国展開している場合、地方から撤退するときの特損に注意。

今後も、ますます都市圏に人口が集まる傾向が続くと見込まれています。

高齢者の人口はどの程度増える?

次に、都道府県別の、高齢者人口の増加率を確認しましょう。いきなり高齢者数が増えると、色々なところに問題が発生すると予想できるからでです。

下のグラフをご覧ください。縦軸は、2040年の65歳以上人口の割合を示します。横軸は、2010年を100とした場合の2040年の65歳以上人口の指数を示します。

グラフの上にあればあるほど、高齢者比率が高いことを示します。また、グラフの横にあればあるほど、高齢者人口の増加が急激であることを示します。

65years-prefectures-1

このグラフを見ますと、東北地方から北海道にかけて、高齢者比率が高いことが分かります。また、首都圏、愛知県や沖縄県では、高齢者が今後大幅に増加すると分かります。しかし、大幅に増加する割には65歳以上人口の比率は比較的低位に抑えられていると言えます。

上のグラフから予想できることをいくつか書きますと、

・首都圏などでは、高齢者数が大幅に増加するため、高齢者を対象にした財やサービスが不足する可能性。
・首都圏などでは、生産年齢の割合が今後も一定の割合を維持できる可能性。
・東北や北海道では、生産年齢人口が不足して高齢者向け財・サービスの提供が維持できない可能性。

ビジネスという視点で見ると、首都圏や愛知県などでチャンスが多そうです。というのは、わずか数十年で高齢者人口が50%も60%も増えることになれば、それだけ彼らの需要も大幅に大きくなるからです。

また、その割には生産年齢人口割合が維持されますので、コストに上手に対応できればビジネスの可能性を見いだせるからです。

よって、これらの地域でビジネスを展開する企業が、長期の株式投資先として候補になるかもしれません。

都道府県別の高齢者数の割合

65歳以上人口の割合について、具体的な数字は以下の通りです。秋田県が常に1位であることに注目できます。秋田県の高齢化社会に対する取り組みが、今後の他の都道府県の参考になるかもしれません。

65years-prefectures-2

なお、上の考察は、人口の多数派を形成する高齢者を中心に分析しています。しかし、現役世代や年少世代を軽視する国は、いずれ衰退の道を歩むでしょう。

高齢者世代をビジネスチャンスとしてとらえつつも、現役や年少世代の発展に大きく寄与できる企業。そのような企業が大いに求められます。

人口推計を見ると、日常生活を見直すきっかけになるかも

以上の話とは別に、私たちの将来の生活を考える上でも、人口推計は大いに役立つでしょう。たとえば、現役世代の場合、老後の生活設計を考えるときに、年金に大きく頼るのは極めてリスクが高いと予想できます。

年金制度そのものは維持されるかもしれませんし、定期的に年金を得られるかもしれません。しかし、現在の高齢者がもらっているのと同程度の額を期待するのは望み薄だと予想できます。というのは、高齢者と現役世代の人数の比率が、現在と将来では大きく異なるからです。

このため、年金を頼りにしていると、高齢になってから大いに後悔することになるかもしれません。高齢になってから後悔しても、もう遅いでしょう。なぜなら、若い時のようには働けないからです。

自分の子供がいれば、状況は異なります。しかし、成長した子供は大人になり、彼らの生活や人生があります。彼らの人生に大きな負担を強いながら生きながらえるプランを、積極的には採用したくないでしょう。

そこで、年金に頼らなくても生活できるような力をつけること・・・これが望ましいです。

老後資金はいくら必要か

では、老後資金として必要な額はいくらでしょうか。これを画一的に提示するのはとても難しいです。しかし、いくつかの質問に答えるだけで簡単に目安の額を提示してくれるホームページがあります。マネーパートナーズのホームページです。

下のキャプチャは、老後に必要な資金をシミュレーションするページにリンクしています。「天国シミュレーター」でなく「地獄シミュレーター」となっているところに、資産を作るのは大変そう・・・という感じが見て取れます。

hell-simulator

 

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